小売業で販売員として外国人を雇うことはできるのか、ということについて説明します。小売業で典型的な業務と言えば、スーパーやコンビニのレジ打ち、家電量販店などの販売スタッフでしょう。
しかし、接客、レジ打ち、品出し、在庫管理といった小売業の店頭で働く仕事は、単純労働と見なされてしまうため、就労ビザを取ることはできません。
ほかの業務であれば、就労ビザが取れる可能性はあります。具体的には、店舗ではなく本部のスタッフとして、事務的な業務を行う場合です。総務、経理、広報、経営企画、マーケティング、システムエンジニアなどです。これらの業種なら就労ビザを取ることができます。
外国人の接客は通訳翻訳業務として認められる?
小売業の中には、外国人のお客様が多い場合があります。家電量販店などで圧倒的に外国人のお客様の割合が多い場合には、それに対応するために外国語を使える外国人のスタッフを雇いたいと思われるかもしれません。
その場合には、通訳翻訳業務として就労ビザを申請できることがあります。しかし、「通訳翻訳なら簡単にビザが取れる」という間違った通説が蔓延しているため、入管もこの手の申請には厳しく目を光らせています。
外国人の客がほとんどいないのに、通訳翻訳として申請をしたり、実際には接客や単純労働ばかりなのに、それを正直に申告せずに虚偽の申請を行うのは厳禁です。
さらに言うと、たとえ外国人の客が多いとしても、それを書類できちんと立証しないと就労ビザは認められません。外国人客の割合はどのくらいなのか、どういう国籍の人が多いのか、どういうふうに外国語を使って業務を行うのか、といったことを丁寧に細かく説明しなくてはいけません。自分で書類を作るのはリスクが高いため、事前に行政書士などの専門家に相談するようにしてください。
事前申告すれば現場研修は可能
ちなみに、経理や広報などの事務スタッフとして外国人を採用していたとしても、新入社員のうちは研修のために現場に出なくてはいけない、ということもあるかもしれません。その場合、現場労働が単純労働だと見なされてしまうことがあるので注意が必要です。
一番良くないのは、入管に何も言わずに隠れて研修を行うことです。これがあとから発覚すると問題になります。現場研修がある場合には、就労ビザを申請する際にそのことも正直に書類に書いておくようにしましょう。
例えば、「最初の3カ月は現場でこういう仕事をする。それは、その後で働くために必要な知識を学ぶためである」ということをきちんと書くことです。そこであらかじめしっかり説明していれば、最初のうちだけ現場労働を含む仕事にかかわることは認められます。
ただし、研修と称して、延々と現場労働だけをさせるようなことはもちろん許されません。何カ月までなら大丈夫だという明確な基準があるわけではありませんが、必要最小限の範囲にとどめておくようにしましょう。
特定活動46号なら単純労働も認められる
ここまで「単純労働では就労ビザが取れない」と説明してきましたが、唯一の例外があります。それは、2019年に作られた新しい在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者/46号)です。これは、日本の大学を卒業した人や大学院を修了した人に限り、特定の条件のもとで単純労働を含む就労が認められる在留資格です。
日本の大学を卒業した外国人がこの在留資格を取るためには、学歴以外にも「日本語能力試験N1を取得していること」などの条件があります。この在留資格があれば、店頭で接客業務などを行うこともできます。
「特定活動」(本邦大学卒業者/46号)が取れるかどうかは個別の状況によって変わりますので、取得を検討している方は行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。当事務所では、電話・メールでの簡単なご相談は無料で受け付けています。