就労ビザに関するお問い合わせで多いのが「飲食店で働く外国人の就労ビザを取りたい」というご相談です。飲食業の就労ビザの取り方について詳しくご説明します。
単純労働では就労ビザは取れない
まず、原則として、飲食店の店頭での接客業務や配膳、清掃などの業務、厨房でのバックヤード業務では、就労ビザは認められていません。それらの仕事は「単純労働」に分類されてしまうため、就労ビザの要件に該当する仕事だと認められていないのです。
これは在留資格「技術・人文知識・国際業務」に関する基本的な原則なのですが、飲食店の経営者の方や飲食店に勤めようとしている外国人の方でも知らない方がとても多いです。
よくあるケースは、お店側が面接して外国人を採用して、あとはビザを取るだけという段階になってから「その仕事ではビザが取れない」と判明する場合です。そうならないように、飲食店の接客などでは就労ビザが取れない、というのを覚えておいてください。
デスクワークなら就労ビザ取得も可能
では、飲食業界で外国人が就労ビザを取れるケースはあるのでしょうか? もちろんそれもあります。例えば、飲食業の裏方として、オフィスで専門的な業務を担当する場合です。
例えば、総務、経理、マーケティングなど、デスクワーク系の仕事をする場合には、就労ビザが認められることがあります。その場合の条件としては、大卒で文系の学部を出ているか、業務内容に関連する専門学校を卒業している必要があります。
また、外国人が、母国の料理を作るシェフとして働くこともできます。この場合のビザは「技能ビザ」と呼ばれています。10年以上の実務経験があることが条件です。
通訳翻訳なら簡単にビザが取れる?
飲食業界では「通訳翻訳なら就労ビザが取りやすい」という噂が流れていることがあります。私も外国人の方からよく言われます。「先生、通訳だったらすぐにビザが取れるんですよね?」と。結論を言うと、決してそんなことはありません。
通訳・翻訳業務とは、具体的には、飲食業であれば、外国人のお客様に対応するためにメニューやパンフレットを日本語から英語などに翻訳する、外国人の店員に対して外国語で業務に関する指導をする、などの仕事が当てはまります。外国人のお客様が多い飲食店であれば、そのような仕事が継続的に発生するということを証明できれば、ビザが取れる可能性はあります。
しかし、本当は接客や厨房の仕事をするだけであるにもかかわらず、嘘をついて「通訳・翻訳業務」として申請をするのはもちろん許されません。不法就労は犯罪ですから、雇用主も外国人も同様に処罰の対象になります。軽い気持ちで虚偽の申請をしてはいけません。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格以外にも、就労ができる在留資格はあります。「日本人の配偶者等」「永住」「定住者」などです。これらの資格がある人は、仕事の内容に関係なく働くことができます。ですから、接客や厨房の仕事も可能です。これらの在留資格がある人は、働くにあたって学歴や職歴の制限もありません。
「特定活動46号」なら単純労働も可能
ここまで「単純労働では就労ビザが取れない」と説明してきましたが、唯一の例外があります。それは、2019年に作られた新しい在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者/46号)です。これは、日本の大学を卒業した人や大学院を修了した人に限り、特定の条件のもとで単純労働を含む就労が認められる在留資格です。
日本の大学を卒業した外国人がこの在留資格を取るためには、学歴以外にも「日本語能力試験N1を取得していること」などの条件があります。この在留資格があれば、飲食店で接客業務などを行うこともできます。
「特定活動」(本邦大学卒業者/46号)が取れるかどうかは個別の状況によって変わりますので、取得を検討している方は行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
飲食業の就労ビザのことは専門家に相談しよう
以上、飲食業に関するビザについて説明してきました。なかなか複雑な仕組みなので、よくわからないという場合には、知らず知らずのうちに法律違反をしてしまうことがないように、行政書士などの専門家に相談するようにしましょう。当事務所では、電話・メールでの簡単なご相談は無料で受け付けています。