レストランなどの飲食店を経営している方から「調理師として外国人を雇いたい」というご相談を受けることがあります。外国人が調理師(料理人・シェフ・コック)として働くためにはどういう種類のビザが必要なのか、それを取るための要件としてはどういうことがあるのか、というのを説明します。
調理師として働くためには「技能ビザ」と呼ばれる種類のビザが必要です。外国料理の調理師、動物の調教師、パイロット、スポーツトレーナー、貴金属の加工職人など、職人的な仕事をするためのビザです。
10年以上の実務経験が必要
調理師が技能ビザを取るためには「10年以上の実務経験」が必要です。専門学校などで調理について学んだことがあれば、その期間も含めて10年以上あれば大丈夫です。
つまり、調理の専門学校に2年通っていたのであれば、それ以外で8年以上の調理師としての実務経験があれば要件を満たすことになります。
ちなみに、タイ料理に関しては例外的に5年以上の実務経験があれば要件を満たします。
在職証明書で実務経験を立証する
実務経験を積むために働いた場所は日本でも外国でも構いません。ただし、申請の際には、働いていたことを証明するための書類を提出する必要があります。
過去の勤務先に問い合わせて、在職証明書を発行してもらわなくてはいけません。辞めるときに過去の勤務先でトラブルを起こしていたり、そのお店がすでに潰れていたりして、経験を証明する書類が用意できない場合には、残念ながらビザを取ることができません。
母国料理の専門店でのみ就労可能
ちなみに、10年間の実務経験を積むのは、どんなレストランでもいいわけではありません。インド人であればインド料理、イタリア人であればイタリア料理といったように、母国の料理の専門店でなければいけません。たとえフランス人の方が中華料理店で調理師として働いても、実務経験としては認められません。
これから就労する予定のレストランに関しても、この要件が当てはまります。つまり、フランス人調理師をフランス料理専門店で雇用する、中国人を中華料理専門店で雇用する、といった形でのみ、技能ビザが認められることになります。
また、メニューの一部にフランス料理が含まれている多国籍料理のレストランがあったとして、このお店でフランス人調理師を働かせることはできません。メニューの大半がフランス料理であるような専門店でなければ、原則としてビザが認められないのです。
母国料理以外の店で働ける在留資格もある
ちなみに「日本人の配偶者等」「永住」「定住者」などの就労制限のない在留資格を持っている外国人は、調理師として働くことができます。その場合には母国料理の専門店だけでなく、どんなジャンルのレストランでも就労は可能です。
調理師として働くための技能ビザは要件が厳しいため取得が難しく、経営者の方や外国人の方が自分で申請すると不許可になりやすいものです。申請の際には行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。当事務所では、電話・メールでの簡単なご相談は無料で受け付けています。