日本に在留している外国人や、外国人を雇用している企業の方から「難民ビザ」という単語を聞くことがあります。
そういう人たちの間では「難民ビザを持っている外国人を雇いたい」「難民ビザを持っていれば働ける」といった話が飛び交っています。
「難民ビザ」は存在しない
しかし、厳密に言うと「難民ビザ」という種類のビザは存在しません。日本に在留する外国人は、それぞれ何らかの在留資格を持っているのですが、その中に「難民(ビザ)」という在留資格は存在しません。
一般的に「難民ビザ」と言われているのは、日本を訪れた外国人が、入管に対して自分が難民であるということを申し出る「難民認定申請」という手続きをした状態のことです。
昔は難民認定申請中に働くことができた
難民認定申請をすると、結果が出るまで時間がかかるため、その間は生活のために働くことが認められていました。
この制度を利用して、難民の条件を満たしていないのに難民認定申請を行い、日本で働く外国人がかつては数多く存在していました。「難民ビザを持っていれば働ける」という噂話もそこから出てきたものでしょう。
現在はほとんど就労が認められない
しかし、2018年1月からこの制度が見直され、明らかに難民条約上の難民に該当しない外国人の場合には、難民認定申請中であっても日本での在留や就労を認めないことになりました。
難民認定申請を行った外国人のうち、本当に難民である可能性が高いと思われた場合には、「特定活動」という在留資格が与えられ、就労することが認められます。ただし、これが認められているのは全体の1%以下です。
このように方針が変更されたことによって、安易に難民認定申請をした外国人が働くことはほとんど不可能になりました。
難民認定申請中の外国人を雇ってはいけない
企業の経営者は、原則として難民認定申請中の外国人を雇用してはいけません。深く考えずに雇ってしまうとあとから問題になることがあります。外国人を雇うときにはその人の在留資格をしっかり確認してください。
外国人の方は「難民ビザを持っていれば働ける」という噂にだまされて、安易な気持ちで難民認定申請をしないようにしてください。
迫害を受けた事実がなければ難民ではない
難民とは「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者」のことです。
母国で迫害を受けて日本に逃れてきたというような特殊な事情がない限り、難民認定申請をして許可が出ることは通常ありません。